イケメン双子と、もれなく『腐』の付く残念女子と。

 スタイル自体は良さそうではあるが、モッサリまとめた服装が、其れを覆い隠している。

 手には大量のコミック本が詰まった書店の袋と、おやつの詰まったコンビニの袋。

 今日は日曜日。どちらも重要な、引きこもり用アイテムである。大量のおやつは、コミック本読破のマストアイテム。

 ドリームランドに旅立つための、非常食であろう。

 少女の名は《佐久良 碧羽(さくら あおは)》十七歳、女。

 このなんとも残念な、涙を誘うファッショニスタは、人びとが行き交う休日の繁華街を、雑踏を縫うように突き進む。

(それにしても、凄い人ごみ。もう少し早く家を出ればよかったかも。油断してると、跳ね飛ばされそうだわ)

 休日の繁華街は、幸せそうなカップルや家族連れで溢れ、独り身には少々切ないものがある。

 黒山の人だかりに辟易としつつ、碧羽は手に持つ戦利品をのぞき見る。

(あ~海くーん♪)

 碧羽は、書店の袋のなかで主に読んでもらうことを待つ、一冊のコミック本の表紙を見て、感嘆のため息をついた。

 ふふふと脂下がり、『これで、お茶碗三杯はイケる!』などと、悶々と烟る気持ちを抑えつつ、帰途へと足を進めるのであった。
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