イケメン双子と、もれなく『腐』の付く残念女子と。
「……ただいま」
家へと帰り着いた碧羽は、玄関ドアを開けながら、蚊の鳴くような声であいさつを口にする。
静まり返った室内。碧羽のあいさつに、返事が返されることはない。
三和土で靴を脱ぎながら、本日の戦利品である大量の本と、菓子の袋を玄関床に下ろした碧羽は、重い荷物で疲れた腕を回しながら血流を促す。
「あ~重かった。自業自得とはいえ、やっぱ単行本八冊と雑誌二冊一気に買うと、重労働だよねえ……お疲れ、わたし!」
碧羽は、床に下ろした宝物を見下ろし、しみじみとその重さに感心し、同時に己を労うという芸を披露した。
自室へ続く二階の階段の許に、とりあえず荷物を預けた碧羽は、手を洗いにパウダールームへと向かう。
地上二階、地下一階。ポスト・モダン様式を用いた、このデザイナーズハウスは、建築家である碧羽の父が、母の夢と希望をふんだんに取り入れて設計したものだ。
父がデザインする住宅は、機能性と快適さ、見た目の美しさが評判を呼び、独立して事務所を開いた当時から、仕事が途絶えず多忙を極めていた。
幼い頃より、父がこの家でくつろぐ姿を、碧羽は殆ど見たことがない。