イケメン双子と、もれなく『腐』の付く残念女子と。
(これはヤバい……これはヤバい……これはヤバい……でも……ま、いっか)

 すぐさま思考をシャットッダウンした碧羽は、臭い物には蓋と言わんばかりに、見なかったことにした。

――涼しくなったら、また考えよう。

 もともとコレクション外の書籍たちだ。

 文字通り『お蔵入り』となった、置き場のないものを押し込めてあるだけなので、ここまでくればひと夏くらい無視しても、どうってことはない。

 碧羽は自分に都合良く解釈した。どこまでもポジティブな腐女子である。その結果が、先述のBL本に埋もれる、腐女子の図に行きつく訳なのであるが。

 * * *

 秋も半ば、エアコンを付けなくても涼しくなってきたので、碧羽は決死の覚悟で、封印していたウォークインクローゼットのなかへと勇み入ったのである。

 当然ながらクローゼット内はカビ臭く、ひと夏十分に吸ったであろう書籍たちの湿気が、クローゼット内の湿度を全開に上げていた。

 すでに予想の範囲であったので、事前に準備は怠らなかった。

 長袖シャツに軍手、ソフトデニムのボトムに滑り止めつき靴下。粉塵マスクとゴーグルで武装は完璧である。
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