イケメン双子と、もれなく『腐』の付く残念女子と。

 どのくらい、そうしていただろう。

 本に埋もれ、気を失っていた碧羽は、金縛りから解放されたように覚醒した。

(あ……あれ? わたし、いったい)

 まだ通常運行とは程遠い意識のなか、ふと背中に異常な重みを感じて焦りまくる。

(なに!? ななな、なにか乗ってる!?)

 もしかして、金縛りにはもれなくセットされる、夏の風物詩のひとつ……そこまで考え、碧羽は背筋が凍る思いがした。

 だがすぐに杞憂だと悟る。手元に目をやると、コミックス本が無数に散らばっていたからだ。

 本気でビビりまくった碧羽であるが、正体も分かれば論外あっけなかった。幽霊の正体見たり枯れ尾花とは、よく言ったものである。

 背中の重みが本の山だと気付いた碧羽は、今度はなんとかしてここから抜け出す必要がある。そう算段し、身を起こそうと腕に力を入れた。

 けれど、思うように身を起こせない。殊の外、背に乗る書籍が重いのだ。BLタワーが雪崩れる拍子に、どうやら棚が外れたようだ。

 積んでいた本の山は、親の仇と言わんばかりに、碧羽に圧し掛かっていた。

 碧羽は、涙混じりに助けを乞う。だが乞うた声に返答があれば、それこそ紛れもないホラーだということに、碧羽は気づくことはなかった。
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