イケメン双子と、もれなく『腐』の付く残念女子と。

「だれ゛が~い゛~ま゛~ぜ~ん~が~~~」

 誰かいませんか。彼女はそう言っている。……いるはずがない。

 助けを求め、モゾモゾ、ガサガサ。必死にもがきながら、本の山だかりから生還しようと、匍匐前進を試みる。

『(お、空いてるぞ?……ったく、不用心だな)』

『(ん~碧羽だからねえ。たぶん本人は気づいてないんじゃない?)』

 一階エントランスの方から話し声が聞こえる。誰か訪ねてきたらしい。しかも、玄関を施錠するのを忘れていたみたいだ。

 ここは『教えてくれてありがとう』と言うべきか、『あんたたち誰よ!』と言うべきか……思案に暮れるところである。

「だ……だ~ず~げ~で~~~」

 だが迷わず碧羽は、第三の選択『わたしはここにいる。助けろ!』を選んだ。

『(お~い碧羽~? いないの~? 碧羽~!)』

『(おい、ちょっとまて!……なんか上から物音聞こえねえか?)』

『(?……あ、ほんとだ。呻き…声? 首絞められて呻くニワトリ? みたいな)』

『(アホ! んなモンいるかよ。上あがんぞッ!)』

――そのニワトリはわたしです

 碧羽は、酷い言われように同意しながら、助けが来たことに心から感謝した。
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