イケメン双子と、もれなく『腐』の付く残念女子と。
碧羽は、声にならない奇声をあげた。
事欠いて、なにを言うのだ! こいつらは――この状況見れば分かるだろ!
碧羽があげた奇声には、逆恨みではあるが、このような恨み辛みが込められていた。
「う゛ふッ……ぅッ……くッくッくッ……ッ」
「ッ――……おいッ……ふふッ……凜、笑ってる場合じゃ……ッッ」
「も゛――ッ!! は~や~ぐ~~」
足音の主は双子であった。碧羽の幼馴染である凜と漸だ。
ふたりは今、本に埋もれる少女を見下ろし、肩を震わせて、BLコミックに埋もれる悲惨な腐女子に顔を背け、必死に笑いを噛み殺している。
碧羽は本に埋もれながら、恥ずかしさと悔しさに戦慄き、早く助けろと呻く。
悪りぃ悪りぃと、まったく悪ぶれた様子もない漸は、碧羽に圧し掛かり圧迫する本の山を退けはじめた。
凛はあさっての方向へと顔を背け、未だに肩を小刻みに震わせ笑いを堪えているのであった。
* * *
「で? いったい、なんで碧羽は本の下敷きになってたんだ?」
「ぼくも……ぷふッ……それ…知りたい」
「いいよ……笑い堪えなくて」
――好きなだけ笑ってください!
笑いを必死に堪えている凜の顔を、悔しそうに睨みながら涙目でそう促す碧羽。もう開き直るしかない。