イケメン双子と、もれなく『腐』の付く残念女子と。
碧羽は、よく母に『なぜお父さんはお家に帰ってこないの?』と訊ね、困らせたものだ。
娘の無垢なる問いに、母は少し困った顔をして、それから直ぐに笑顔でこう答えてくれる。
『お父さんはお仕事が忙しいから、お家にあまり帰ってこられないの。けどお父さんは、世界でいちばん碧羽を愛しているのよ?
だから碧羽も、お父さんをずっと好きでいてあげてね?』
今度は少し寂しそうな顔をして、母は碧羽にそう諭してくれた。
父がいなくて寂しい思いもしたが、それでも碧羽のそばには、いつも母の存在があったので、笑顔を忘れない子でいられたのである。
いつも笑顔の優しかった母は、碧羽が初等部へ上がるまえに病気で亡くなった。
ワーカホリック気味だった父も、母が鬼籍に入ることにより、一時期在宅ワークに切り替え、碧羽のそばにいてくれた。
だがそんな時間も長く続くことはなく、ぼどなくして父は、また家を留守にするようになる。
碧羽の世話は、ハウスキーパーを雇うことで此れを賄った。当時から通ってくれているハウスキーパーとは、すでに十年以上の付き合いになる。
同じ空間で過ごすという意味合いでは、両親よりも長い付き合いである。