イケメン双子と、もれなく『腐』の付く残念女子と。
漸の科白に碧羽は悩む。
別に嫌という訳ではない。取り立てて、問題があるという訳では……そこまで考えて、碧羽は胸の裡がちりちりと焼ける、奇妙な感覚に首を傾げた。
(ん? なんだろう……この感じ。ふたりを見てると、なんだかモヤモヤする……)
己の心が出すシグナルに、彼女は酷く狼狽する。
それは碧羽が、いつも読んでいる漫画で、主人公と共感したときに感じる心の痛みに似ていた。
けれども、なぜ今その感覚に襲われるのかは、碧羽には理解できない。
ともあれ、駄目かと言われて『いいよ』などと、即答など出来ようものか。
漸の科白に頭を抱える碧羽。すると彼女の顔をのぞき込むようにして、漸が顔を曇らせる。
「碧羽? どうした、なんだか顔色が悪いぞ?」
「! な、なんでもないッ!……もうわたしたち、子供の頃とは違うのよ。だから今更一緒じゃなくていいと思う。それに、今までずっとそうだったじゃない」
ひと呼吸おいて、更に碧羽は胸裡を紡ぐ。
「あのね? わたし自分の時間を大切にしたいの。これまでそうだったように、これからもわたしはひとりがいい。
それに凜と漸には彼女がいるじゃない。学園中の女子たちが彼女だって、噂聞いてるよ?」
「いや、さすがにそれは誇張しすぎだ。尾びれがつきまくってるな」
あごに手を添え漸少年は、「それは大きな間違いだ」と訂正をする。
「そうだよ。僕らそんなにた沢山の女の子となんて、付き合ってないよ? それじゃあ身が持たないでしょ。それに好みもあるしね。……あのね、僕の好みは碧――」
「おまえは来る者拒まずだろう?」
頬に指を添える凛少年は、あざとい仕草と胡散臭い科白でもって、どさくさに紛れ碧羽に告白しようとする。
けれどもそれは、漸の言の葉により強制終了させられた。無念。
「ちょっとソレ、ひどい誤解だよね。だいたい今、僕は碧羽にキュン系の告白するとこだったんだよ? それなのに、話を被せるなんて――」
「凜は放っておいて構わない。碧羽、まずは俺たちの誤解を解かせてくれないか?」