イケメン双子と、もれなく『腐』の付く残念女子と。
碧羽の趣味を赤裸々に物語る、クローゼット内に散漫するコミック本。
漸は其れらを目に入れぬよう、細心の注意を払いながらまとめ上げ、凜は其れらを一冊づつ吟味するように、内容を確認しながら弟の邪魔をする……なんとも理に適わぬ共同作業に精を出していた。
「おい……凜も手伝えよ。いつまで経っても、終わんねえだろうが!」
「ええ~僕いまさ、コレ読むのに忙しいんだけど……」
「ンなモン読むな! 脳がイカレちまうぞ」
「あははッ! じゃあ、碧羽はどうなるの♪ 年季はいってるんだよ? てかね、僕は碧羽がどんな男に萌えるのかリサーチしてんの。
謂わばコレって、碧羽の好みが詰まった教科書みたいなもんでしょ?」
「なるほど……参考にできるか。一理あるな……よし、じゃあそっちは任せた」
「ウィ」
両者の目的が一致した。ここに、不純すぎる契約がまとまったことを、明記することとする。
ふたりの――ほぼ漸ひとりで――涙と努力の甲斐あって、あれほどクローゼット内を圧迫していた書籍たちは、行儀よく八十五の本の束へと変貌を遂げたのである。
やりきった感半端のない、晴れ晴れとした漸の表情。額に輝く汗など、労働者の鑑のようである。
功労者である漸のとなりでは、読み切った感半端のない、以前は凜であった脱け殻が、遠くを見つめ黄昏ていたのであった。