イケメン双子と、もれなく『腐』の付く残念女子と。

「碧羽。これ美味しいよ、食べてみな」

「うん。わーい♪」

 繁華街は大通りに面した一角にあるカフェ、『Casa del mese(カーサ デル メーゼ)』。

 イタリア語で『月の家』を意味するこのカフェは、オーナーが学生時に留学し、そこで出逢ったイタリア人の女性と結婚し、妻とともにこの地で開いたカフェである。

 妻であるルナの明るい気性と、古式ゆかしいイタリアとオリエンタルが融合した雰囲気に、若い女性からビジネスマンまで、幅広く人気のカフェである。

 特にこのカフェの名物でもある、季節のフルーツをふんだんに使用したタルトが、雑誌にも掲載されるほどの人気を博しているのである。

 碧羽の趣味の仕入れも終わり、歩き疲れた三人は、人気のカフェで休憩することに。

 其々好きなドルチェと飲み物を頼み、こうして今漸の目のまえで、凛は碧羽にイチャコラと自分のドルチェを恋人食いさせている。はっきり言ってウザい。

「ん~おいしいッ♪ やっぱりここのタルトって最高♪」

「ふふ。碧羽は昔から甘い物が好きだったもんね。ほら、もっと食べていいよ。その代り、碧羽のトルタバロッツィ僕に食べさせて?」

「うん、いいよ。凜は昔からチョコレートが好きだったよね」

「今も大好きだよ♪ 碧羽が食べさせてくれたら、もっと好きになるよ」

「そうか、なら俺がたっぷり食わせてやるぞ。おら……口開けろよ」

 ふたりの甘い雰囲気に水を差すように、漸が立ち上がって凜の顎を鷲掴みにする。
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