イケメン双子と、もれなく『腐』の付く残念女子と。

「ちょ……ちょっと、やめてくれない? 僕はそんな趣味ないから……痛いんだけど」

 闘志のこもった漸の渾身の左手に、顎を鷲掴まれた凜が苦情を口にする。上向きにされてるので、目だけを漸に向ける凜。

 漸は己が食べていたトルタカプレーゼをフォークに突き刺し、凜の口へとつっ込もうと躍起になる。

 漸の額(ひたい)とフォークを握る手には、くっきりとアオスジが浮き上がっている。

 そうはさせるかと、凜もされるがままではない。フォークを握る漸の手を、これまた渾身の力で掴み押し返す凜だ。

 突き刺されたトルタカプレーゼが、空を彷徨い行ったり来たり。

「おら……遠慮すんなよ……つか、食いてえんだろ? 早くしねえと落ちちゃうぜ?」

「や……やだなあ……遠慮なんて、してないから……目イッちゃってるよ? 放し、て」

 両者一手も引かぬ掴み合い。だが掴みどころがマヌケであった。

「「だれがマヌケだッ!!」」

 碧羽はふたりの絡み合い……いや、掴み合いに感嘆のため息を……いやいや、一発触発で白熱した戦いを、固唾を呑んで見守っている。

 碧羽は腐フィルターを透し、彼らのバックには溢れんばかりの花々が、見事に咲き誇っていたという。
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