イケメン双子と、もれなく『腐』の付く残念女子と。

「ああ゛!? バカっておまえ――」

 バカと言われた漸は、心の裡で『その言葉そっくりそのままてめえに返すぜ』と、鼓動を速くして憤る。

「はいはい。ふたりとも真剣にね? 凜、もっと寄り添う感じで……もう少し右に」

「はーい! 姫の仰せのとおりに。これでいい?」

「うん、完ぺき!」

「……はあ」

 碧羽の注文に対し、凜は嬉々として従順に従う。嬉しそうに脂下がっているところを鑑みると、尻に敷かれることすら幸せを見出せるとみた。

 そんな微妙な性癖を持ち合わす片割れをうかがい、漸は深い深い深層のため息をつくのであった。

 それはそうと、彼らはいったい何をしているのであろうか? それに碧羽は、彼らになにを指図しているのであろう。

 なんとなく読めた……などと勘ぐってはいけない。まずはランチタイム以前にまで、時間を巻き戻してみることにしよう。

 それはそれは、碧羽の手料理が食せる、夢のような幸せのひと時―――



「ただいま」

 繁華街から徒歩で三十分。碧羽たちが住まうレジデンスは、翡翠ヶ丘でも取り分け閑静な地区にある。

 先程まで喧騒と雑踏のなかにいた碧羽たちは、家に着くなりほっとして、身体から力が抜けるのを感じた。

「ただいま~ふふふ。碧羽いつもそう言って家入るよね。僕の部屋の窓から、碧羽がひとりで可愛いことしてるの、見てたんだよ?」
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