イケメン双子と、もれなく『腐』の付く残念女子と。
愛しの碧羽に作ってもらったランチで満足した凜と漸は、嬉々として彼女の自室へと移動し、行儀よくソファへと腰をおろす。
だがそれも、ものの数分で後悔へとすり替わってしまった。この部屋は隅々にわたり、碧羽の香りで満ち溢れているのだ。
健康的な高校生男子が、好きな女の子の部屋へと上がり込み、平静を保っていられるはずがなかったのだ。
あたりを見回すと、そこかしこに彼女の私物がうかがえる。……当然だ、彼女の部屋なのだから。
これまでに、凜と漸は恋人を切らしたことがなかった。学校中の女子がふたりの恋人だと言う碧羽の科白も、あながち外れてはいなかったのである。
一卵性双生児である凜と漸は、顔の造形や背格好、声音など瓜二つである。けれど大きな違いは、その性格にある。
凛は常に飄々としたスタンスを崩さず、すべからく女子たちに平等なる愛を囁くという、まこと胸糞の悪いフェミニストである。
対する漸はというと、野分吹きずさむ孤高の狼といった体(てい)で、彼女変わりは激しいがひとりに心をひらくといった、まさにどうでも良いハードボイルドである。