イケメン双子と、もれなく『腐』の付く残念女子と。

 水無月 海は、学園内ではすこし浮いた存在。溢れんばかりの美貌の持ち主ではあるが、その麗顔が笑みに崩れたことはないという。

 無論のこと、彼には秘かなるファンが数多と存在する。彼を慕い、胸を焦がす憂い人が列をなすが、なんといっても彼に対する衆人の印象は、ずばり高嶺の花である。

 遠くからそっと、窺い魅入る銀幕の麗人として、だれも彼には近づくことはなかったのだ。

 けれど、そんななかにいて、ひとりだけ彼に名乗りを上げた者がいる。それが陽向 陸というわけだ。まったく以って、ありきたりな懐ドラ的展開である。

 水無月 海は、静穏と孤独を愛する。日常の変化を最も嫌うのだ。

 ともすれば、枯れ果てた縁側愛好家の老翁(ろうおう)とも取れなくもないが、頑なとして彼は衆人の輪には属さない。

 彼の安寧と静穏を脅かすこととなる存在。目の上の瘤(こぶ)。陸と海の恋の行方は、しかし海の陥落を以って決着がつく。

 気がつけば海も、情熱的に愛を囁く陸に、いつしか恋心を抱いてしまったのであった。

 巻は重版をくり返しながら、現在十四巻が発刊されたばかりである。

 ベタな懐ドラ的腐コミックスは、売れに売れてただ今腐女子にとっての『バイブル』と評されている――
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