イケメン双子と、もれなく『腐』の付く残念女子と。
「ッ~~~!!」
漸が声にならない怒りで凜を睨む。頭で罵倒し心で呪いの言葉を唱えるという、非常に器用な技を披露する。
「うん、かわいいよ。前髪をピンで留めてあげたら、ほら……愛らしい女の子の顔が出てきたよ」
そういって、凜がドレッサーの鏡に映る碧羽の顔を覗き込む。
碧羽は凜の科白が一々恥ずかしくて、俯き加減に頬を染めた。……『クサいぞ、おまえ』と口にする勇気は、しかし碧羽にはなかった。
「じゃあ、行こうか」
「……うん」
碧羽の手を取った凜は、彼女をエスコートしながら部屋を後にした。それまで憤怒のあまり固まっていた漸も、後を追うようにして部屋を辞したのであった。
* * *
「――こんな感じでお願いします」
「はい、お任せください」
「じゃあ碧羽。僕は向こうのソファで待ってるからね。可愛くなっておいで」
「うん」
甘ったるい笑顔をふりまく凜が、碧羽の頭を撫でながらそう口にする。それから美容師に会釈をして、漸の待つ待合室のほうへと去って行った。
「ふふふ。すてきな彼氏さんですね」
「え!? ちちち違います。凜はわたしの幼馴染ですッ!」
真っ赤になりながら、碧羽は美容師の勘ちがいを即座に訂正する。