イケメン双子と、もれなく『腐』の付く残念女子と。

 漸の手のうえには、女子力の高いペーパーバッグが乗っている。その絵面は余りにもシュールで浮いているが、当人はまったく気にしてはいない。

 彼が店員から貰った戦利品は、さきほど凛が味を占め称賛を贈っていたサブレである。

 甘党の凛を魅了し誘惑するサブレを作っているのは、最近この翡翠ヶ丘に店舗を構えたパティスリーだ。

 フランス・ノルマンディ産の発酵バターを使用して作られるサブレは、口に含むと溶けて無くなるほどに繊細で、パティスリーのガトーで一二を争う人気商品である。

「しかし、かわいい入れ物だね。あはは♪ 漸によく似合ってるよ」

「ンだと!? 馬鹿にしてんのか!」

「……やだなあ、褒めているんだよ。最近、漸て被害妄想ひどくない?」

「てめえが言うな! つか、今の『間』はなんだよッ!」

「あはッ……あ~そろそろ、碧羽の施術が終わるころかな~」

「はなしを逸らしてんな!」

 水と油であった。

「それはそうとさ、この後の予定なんだけど――」

「おい、急にシリアス顔になんなよ、この悪魔。つーかよ……その指は、なんだ」

 漸につっ込まれたとおり、凛は腰に左の手を当て、方や人差し指を立てた右手を漸に向けている。

 意味あり気にうふふと笑い、さきほどの通話内容を漸にして聞かせた。
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