イケメン双子と、もれなく『腐』の付く残念女子と。

 久しく見ることのなかった夢裡の記憶をたどり、碧羽は苦い過去を想起した。

「佐久良さん、椿木くんたちと仲いいんだね。でもひとり占めとかって無くない?」

「え……わたし、そんなことした覚えないんだけど。それにふたりとは家が隣同士で、幼馴染だから自然とそう見えるだけで――」

「じゃあ、私に凜くん紹介してよ。まえから気になってたんだ~いいよね?」

「それって凜のことが好きってこと? だったら、自分で伝えたら?」

「何それ! どうしてあんたに、そんな上から言われなくちゃなんないわけ!?」


――サイテー、傲慢、高飛車、性格ブス

 碧羽が、クラスの女子たちに罵られる、常套文句である。

 陰口が飛び交い、通り過ぎ様に中傷罵倒される。ほぼすべての女子たちを敵に回すという、涙を誘う快挙を成し遂げたのは、碧羽が初等部低学年の砌である。

 現在の彼女からは想像もつかないが、碧羽は類まれなる美少女であった。

 いや、顔の造形はリコール出来ないので、ただ今の彼女もはっとするほどの美しさを、その仮面の下に呈している。

 それがどうして、今般のがっかりするようなルックスへと、変貌を遂げたのであろうか。
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