離婚前提策略婚。─続編─【改訂版】
みんなが涙ぐんでる。嬉しいような寂しいような、言いようのない気持ちの中、龍成に軽く背中を押された。


「行くぞ」


今までに見たことのないような、優しい表情の龍成。

この人が今日、わたしの旦那様になる人。

今度は偽装なんかじゃないんだ。


「うん。じゃ、後でね。行ってきます」

「「「「行ってらっしゃい」」」」


みんなに見送られ桜庭家を出る。


もう、ここはわたしの家じゃなくなる。わたしの本当の意味での、帰る場所じゃなくなる。

それがとてつもなく寂しい。


「その顔で花嫁になれんのかよ」


……龍成の車に乗り込んだあとの第一声がこれって、おい。


「少しくらい浸らせてよ。全く、空気読めないんだから」

「感傷に浸るのもいいけど現実を見ろ。一生残る写真が腫れぼったい顔で写っていいのか?」
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