離婚前提策略婚。─続編─【改訂版】
華乃の後頭部の髪の毛を、ぎゅっと鷲掴みにする。


離したくない。離す気なんて、微塵もない。


「こんな時くらいは素直にならないと」

「お前もわかってきたじゃねぇか」

「…どこまでも上から目線」

「当たり前だ」

「……」


不服そうに言ったあと、突然華乃は俺から少し離れ距離を作る。俺を見下ろす華乃の表情は、どこか切なそうに見えた。


「どうした?」

「今でも夢みたいなの」

「は?夢?」  

「龍成に触れられることが。触れ合えることが」

「──」


何を言い出すんだ、こいつは。


「前はね、どんなに近くにいても何よりも遠かった。同じ部屋に帰ってきて、同じ部屋にいて、同じベッドで寝て、それでも誰よりも龍成を遠く感じてた。今、龍成が目の前にいてわたしをちゃんと見てくれてる。わたしを抱きしめてくれる。……夢じゃないよね?」


言いながら目を潤ませる華乃。あの頃、そんなことを思っていたのか。
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