離婚前提策略婚。─続編─【改訂版】
……。


…人をこれほどまでに愛しいと思えるなんて、俺は知らなかった。もちろん人生の中でそんな経験は一度もない。


言葉にできない感情。感極まるとでも表現するのだろうか。


男のくせにこんなことで胸が震えるなんて、俺、何かの病気か?


それならきっと、治せるのはこいつしかいない。きっとじゃねぇ、俺には華乃しかいねぇよ。


「夢なわけあるか。こんなにもリアルなのに」


感情が高ぶり、ろくなことが言えない。気の利いた言葉が出てこない。


前の俺なら考えずとも口から出てきていたのに、なぜこうも自分をコントロールできなくなってしまうのだろうか。


右手で華乃の左頬に軽く触れる。その上に、華乃は自分の手を添えた。


「……キス、してもいい?」


そう不安げに問う華乃は、俺の目に世界中のどんな女よりも可愛く映った。
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