離婚前提策略婚。─続編─【改訂版】
「いいよ気にしなくて。仕事だから仕方ないもの。それに悲惨なところを見られずに済んだし」

「は?悲惨って、何かあったのか?」

「ま、安産だったみたいだから大丈夫。それよりほら、抱っこしないの?会いたくて待ちこがれてたでしょ?」


華乃に差し出された、小さな、思っていたよりも、ずっとずっと小さな、人間とは思えない生き物。


俺はただただその姿を見つめていた。


体よりもかなりでかい服を着せられ、その上でタオルを巻かれ、よりいっそう小さく見える。


触れるのが怖いと思ってしまうほど。


「予定日より少し早いですが、とっても元気ですよ」

「今は泣き疲れて寝ちゃったのかな。ていうか早く抱っこしてよ、パパったら」

「え?ああ」

「お父さん、赤ちゃんを抱っこする前に消毒してくださいね」

「はい」


ブレザーを脱ぎ消毒を終え、なぜか少しだけびくつきながら、華乃から我が子を受け取った。


……あほか俺。なんで手が震えるんだよ。


「途中赤ちゃんの心拍が下がったりして、最後の最後は看護師さんが上から押してくれたの」

「はあ?それで安産なのかよ!」

「安産ですよー!心拍が下がったのは赤ちゃんの首にへその緒が巻き付いたのが原因でそれは大丈夫でしたし、陣痛がきてから三時間で産まれたので、初産にしては早いですよ!」
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