離婚前提策略婚。─続編─【改訂版】
個室に入ると、母親用のベッドが一台、付き添い用にはソファーベットが用意されていた。


華乃をベットに座らせると、助産師のおばさんは華乃の隣にベビーベッドを置いた。


「何かあったらナースコールしてくださいね」

「はい。ありがとうございました」


おばさんが去っていくと、部屋の中が一瞬静まり返った。


そこで華乃は大きく息を吐く。


「─どうだった?」


華乃に向かい合うように、俺はソファーベットに腰を下ろす。


「想像を絶する痛みだね。今も傷口が焼け付くみたいに痛いよ」

「男は耐えられないって言うもんな」

「陣痛中のわたしを見たら、龍成きっとドン引きしてたよ」

「そんなにか」

「ほんと、ドラマみたい。看護師さんに乗っかられた時は本気で死ぬかと思った」

「次は何が何でも立ち会わねぇとな」

「産んだばっかで二人目のこと考えられないよー!」

「はは。……お前も子供も元気で良かった」

「……うん」

「……お疲れ」


経験したことがないからか、経験することができないからか、こんな平凡な言葉しか言えなかった。


もっと気の利いた台詞を言えねぇのか俺は。
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