離婚前提策略婚。─続編─【改訂版】
「わかるよ!口は龍成のお父さんじゃない?髪が少ないのはわたしに似たのかな。わたしも産まれた時髪の毛なかったんだよね」

「お前に似たのはそこだけかよ」

「わたしにはどこも似なくていいのにね」


……ばかだな。


「ありがとう」

「え?」

「産んでくれて、ありがとう」

「龍成……」


目が潤むことなんて、久しすぎて記憶にない程。

どうしてだろう。俺の目から涙がこぼれるなんて。


──正直な話、可愛いなんて思えなかった。

この小さな命にひたすら感動するしか、俺にはできなかった。


胸が熱くて、俺の腕の中で静かに息をするこいつを見ていると、何があっても絶対に守ろうと、自分がどうなろうと命を懸けて守り抜こうと、強く強く思った。


「それを言うなら、赤ちゃんに産まれてきてくれてありがとう、でしょ?」

「そりゃそうだけど、お前だって大変だっただろ」

「この子が一緒に頑張ってくれたから、わたしも頑張れたんだよ。わたし達を選んでくれて、本当にありがとう」


華乃は愛おしそうに子供を見つめ、自分の何倍も小さい手を握った。


「俺もできることなら一緒にいたかったよ。いても何もできなかったとは思うけど」
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