離婚前提策略婚。─続編─【改訂版】
─胸が鈍く痛む。


「…ばーか」


華乃の頬を緩くつねる。

反応しないところを見ると爆睡したのだろうか。


結婚する前から離婚の心配をするなんて馬鹿なやつ。…もしかして、結婚したくない本当の理由はこれか?


だとしたら、あの時の離婚はそれだけ華乃の中に大きな傷を作ったんだ。

わかってはいたけど、改めて思い知らされる。


俺の罪。──消せない、罪。


その分華乃を幸せにすると誓ったのに、この有り様だ。まだまだ男として俺は足りない、出来てない。


幸せにするはずなのに不安にさせて、自分の愚かさを目の当たりにする。


今仕事を頑張っているのも華乃の為。華乃との結婚の為。


どうして結婚したいかなんて明白だ。


『華乃を幸せにしたい』


この大義名分のもとに、俺はどんなにしんどくて逃げ出したくなっても、背を向けずに仕事をしていられるんだ。

華乃と結婚したいという気持ちは、罪滅ぼしなんかじゃない。


これが愛情以外の何物なんだってんだよ。
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