騎士団長殿下の愛した花
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驚くほど何も無いまま数日が過ぎた。
フェリチタの1日の予定は毎日同じ。
朝起きてルウリエに身支度を整えてもらい、食事。それから彼女に人間たちについての話を教えてもらったりしているといつの間にかお昼。そんなに口が軽くていいのかと不安になるが……。そして夕方になると、執務と鍛練の間の時間に第二王子がやってくる。
だから、彼がノックした後扉を開いた第一声も、いつもと一緒。
「今日もどこにも出てないのか……」
フェリチタの、割にシンプルな装いと素足にスリッパを履いているのを見て心做しか肩を落とす。
フェリチタはそれに首をかしげながら肯定した。
「そうです。捕虜が出歩いて良いとでも?」
正面の椅子に腰掛けてレイオウルが呻く。
「いや、うん……特に外出制限を設けているつもりは無いからドルステやルウリエや、誰かを共に連れて行くなら何処へでも行っていいんだけど……お前は行きたい所とか、外に出たいとか無いの?」
「無いですね。この立場で外に出て、悪い事は起これど良い事が起こるとは思えませんから。貴方やドルステさん、ルウは例外です」
何故か敵国の捕虜の方が正しい事を言っているので何も言えずにレイオウルは口を噤む。表情の乏しい彼にしては珍しく『不満だ』と顔に大書してあるのにフェリチタは更に戸惑った。
その様子を見ていたルウリエがお茶を注ぎながら肩を竦める。
「レイオウル殿下、フェリチタ様に察しろというのはなかなかに難しいと思われますけど。はっきりおっしゃた方が宜しいのでは?ご自分が一緒に出かけたい──」
「ルウリエっ!」
「あら、うふふ失礼致しました」
言葉の割に全く悪びれている様子はないし、彼も本気で怒っているわけではなさそうだった。いつかの団員達にしたように一喝すればいいのに、レイオウルは何だかやりにくそうだ。