騎士団長殿下の愛した花

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赤く腫れた目を冷やしてどうにか宥めレイオウルに連れられて部屋に戻ると、ルウリエが部屋の中をうろうろと落ち着かない様子で忙しなく右往左往していた。只事ではない様子にぎょっとしていると、ルウリエがこちらに気づいて飛びついてきた。

「ふぇ、フェリチタ様!申し訳ありません!ああ、美しいお顔が、銀の御髪が……!私とした事が悪ふざけが過ぎました……っ、本当に何とお詫び申し上げたら良いか……!」

「え、えっと?そんなに謝らないで、ルウ。一体どうしたって言うの」

ルウリエの話と彼女を補足するレイオウルの話を要約すると。

フェリチタが1人で飛び出した後、ルウリエはレイオウルを呼びに行った。散歩に行くことになった時点で、彼女は途中でレイオウルを呼びに行き二人きりにしようと画策していたのだという。今思えば、だから散歩に行くだけだったのに煌びやかに飾り立てられたのだ。
ルウリエが急ぎレイオウルの執務室まで呼びに行っている僅かな間に、フェリチタは運悪くシャノット伯爵の娘達に出会った。そしてレイオウルが飼育棟に向かい、フェリチタと2人に遭遇、状況を把握。
フェリチタが卵塗れになっていると報せを受けたルウリエは慌てて湯浴みの準備を整えて待っていたのだという。

こんな事になるとは思わなかった、と項垂れるルウリエを見て、フェリチタはとても怒る気にはなれなかった。レイオウルが咎めない事を含めて、彼女が彼女なりに自分たちの為にと思って考えた企みだということはわかったからだ。


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