騎士団長殿下の愛した花
「殿下……」
フェリチタは躊躇うように何度も口を開け閉めした後、意を決して喉を震わせた。
「……レイ」
自分で呼んだのに、息が止まりそうだった。
身体の奥からせり上がってくる感情に、呼吸が浅くなった。こんな気持ち知らない。こんなに、人を守りたいと思う気持ち。そばにいたいと思う気持ち。鼻がつんと痛くなって、涙が出そうだった。
こんなに涙脆くなかったのに。心の内に隠してこれたのに。いつだって泣きたくなるのは、この人が関わっている時だ。
顔を近づけて寝息を確かめる。規則正しい呼気が聞こえてきてフェリチタは満足気に頷いた。
(寝てるなら……いいよね?)
フェリチタはまだレイオウルの髪を撫でている。
「レイは……私のこと、どう思ってるの?どうして優しくしてくれるの?どうして連れてきたの?」
全部、ずっとききたかった問い。
「私、何か最近変で。凄く変で。レイを見るだけで、胸がぎゅうううーっ、てなるの」
耳の横の髪を耳に掛ける。その形の良い耳が、
「私、たぶん……そう、レイの事が──」
……真っ赤に染まっていた。
レイオウルが少し顔を回してこちらを隻眼で見つめる。頬はもっと真っ赤だった。
「ご、ごめん。起きるタイミングが掴めなくて」
「い、いつから……………………っ」
「『私のこと、どう思ってるの?』の、あた、り?」
「それ、ほとんど全部!」