騎士団長殿下の愛した花
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正式に人間は森人への徹底交戦を決定。ヤーノが森との連絡手段を持っていないのを確認しているため、何も気がついていない筈の森人らの不意を突こうと準備は秘密裏に行われている。城の者達は把握しているが、城下町以下、国民たちは何も知らずいつも通りに生活しているだろう。
最大最低の状況を想定される戦乱まで、今日で残りの猶予を既に半分としていた。
城内が騒がしいのはここ最近ずっとだが、何故か今日は城の外も人が忙しなく行き来している。
「何だか今日はやけに慌ただしいね?国王陛下が方針を変えると思えないんだけどな」
窓の外を眺めながら首を傾げるフェリチタにレイオウルがどこか恥ずかしそうな口調で言いにくそうに答えた。
「……今日は兄上の誕生日なんだ」
「これお誕生日のお祝いの準備なの?へえ……凄く賑やかにするんだね」
「王族の誕生日を生誕祭と称して国包(ぐる)みで祝うのがクリンベリルの恒例行事で……こんな状況だけど、国民たちは知らないから。中止なんてしたら怪しまれるだろうしね」
城は割と高台にあるため城下の方がかなり遠くまで一望できる。町中の皆が忙しそうではあるが楽しそうに準備しているのがここからでも分かる。
「本当にお祭りみたい……」
(こんなこと言ってる場合じゃないんだけど)
思わず浮ついた言葉が漏れてため息をつく。
懐中時計を見てレイオウルが立ち上がった。
「ごめん、時間だ。また夕方来る」
王族であり騎士団長でもあるレイオウルは常に色々な所に顔を出していて、その隙間の僅かな時間でここに来ているようだ。しかし負担には違いない。