10年愛してくれた君へ
1.春は嫌い
---春は嫌いだ。
みんなは春の温かな陽気、暑過ぎず寒すぎずな気候が丁度いいから好きと言うけれど。
出会いの季節でもあるが、別れの季節でもある、この季節。
そして何より...
「ぶえーっくしゅん!!!」
「...花粉症って大変ね、藍」
そう、花粉症の私にとってはこの季節は大敵なのだ。
目はかゆすぎて赤くなるわ、鼻水は止まらないわでいいことなし。
くしゃみの予感がすると慌ててハンカチを取り出すが、たまに間に合わないこともあり、そんな時は手で口を押さえてすぐに手を洗いにいく。
マスクをすればいい話だが、唾で濡れるのが嫌なのだ。くしゃみをする度に取り替えるわけにもいかない、色々と面倒な季節だ。
そんな謎なこだわりを持つ私は鵜崎藍(ウサキアイ)、どこにでもいるような普通の高校生。
彼氏はいたことないけれど、人並みに恋もしてきたし、片手で数えられるくらいだが告白もされたことがある。
なのになぜ彼氏を作らなかったのかって?
私は恋に奥手なのだ。
自分が相手を好きじゃないと付き合うことができない。
付き合っているうちにだんだんと...という概念がそもそもない。
これを周りにいうと、口を揃えて言われるのが『あんたもったいない』だの『そんなんじゃ一生彼氏なんてできないよ』だの。
彼氏がいるのってそんなにいいことなのか?
こんなこと言ったら言い訳に聞こえるかもしれないけれど、私は自分自身を大切にしたい。
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