10年愛してくれた君へ
「お母さんはてっきり、藍と春人くんがくっつくものだと思ってたけど、案外うまくいかないものね」
ページをめくりながら呟くお母さんの言葉に、内心ドキッとした。
頭を巡るのは、夢での春兄の告白。
単なる夢なのに、どうしてこんなにもドキドキするのだろう。
そして、いつもなら覚めれば消える夢が、今回は鮮明に頭に残っている。
「…実はね、お母さんさんにも幼馴染の男の子がいたの」
「そうなの?」
そんなの、初めて聞いたな。
「その子は同い年だったんだけど、幼稚園から一緒で一番仲が良くて。もちろん大好きだったわ、幼馴染として。でも…」
お母さんの表情が少しずつ曇った。
「その子はずっと、お母さんに恋していたみたいだったの。それに気づかないまま大きくなって、お母さんは別の人と付き合い始めたわ」
今までお母さんのそういう話を聞いてこなかったから、自然と耳が傾く。
初めて知る、お母さんの過去。
「中学3年のときかしら。その子ね?事故で亡くなったの」
「えっ…」
「その後にその子のお母さんから聞いたのよ。彼の本当の気持ちを。そのときお母さん、身体中の水分が全部無くなるくらいに泣いたのを覚えているわ。失ってから気づいたの。その子の存在の大きさ、大切さに」
言葉が出なかった。
身近な人が若くしてこの世を去ってしまうなんて、私には想像もできなかったから。
「いることが当たり前だと思って、普段感謝することもなかった。だから後悔したの。たくさん『ありがとう』を伝えておけばよかったって」
「お母さん…」
重たくなる空気。
それを察したのか、お母さんは急に明るい声を出した。
「あ、だからあんたも、普段から親しい人への感謝は忘れずにってことよ!」
「うん、それはもちろん…」
お母さんはアルバムを閉じ、本棚にしまった。
「晩御飯食べるでしょ?用意するからテーブルの上片付けておいてくれる?」
キッチンへと姿を消した。
重い空気を変えようと、咄嗟にテレビをつける。
こんな時に限って暗いニュース番組だ。
チャンネルを変え、なるべく楽しい番組を選んだ。
あ、お笑いやっている。
こりゃラッキーだ。
私はテレビを見入った。
いや、見入る努力をした。
だけど、どんなにテレビのボリュームを上げても、あまり耳に入ることはなかった…
ページをめくりながら呟くお母さんの言葉に、内心ドキッとした。
頭を巡るのは、夢での春兄の告白。
単なる夢なのに、どうしてこんなにもドキドキするのだろう。
そして、いつもなら覚めれば消える夢が、今回は鮮明に頭に残っている。
「…実はね、お母さんさんにも幼馴染の男の子がいたの」
「そうなの?」
そんなの、初めて聞いたな。
「その子は同い年だったんだけど、幼稚園から一緒で一番仲が良くて。もちろん大好きだったわ、幼馴染として。でも…」
お母さんの表情が少しずつ曇った。
「その子はずっと、お母さんに恋していたみたいだったの。それに気づかないまま大きくなって、お母さんは別の人と付き合い始めたわ」
今までお母さんのそういう話を聞いてこなかったから、自然と耳が傾く。
初めて知る、お母さんの過去。
「中学3年のときかしら。その子ね?事故で亡くなったの」
「えっ…」
「その後にその子のお母さんから聞いたのよ。彼の本当の気持ちを。そのときお母さん、身体中の水分が全部無くなるくらいに泣いたのを覚えているわ。失ってから気づいたの。その子の存在の大きさ、大切さに」
言葉が出なかった。
身近な人が若くしてこの世を去ってしまうなんて、私には想像もできなかったから。
「いることが当たり前だと思って、普段感謝することもなかった。だから後悔したの。たくさん『ありがとう』を伝えておけばよかったって」
「お母さん…」
重たくなる空気。
それを察したのか、お母さんは急に明るい声を出した。
「あ、だからあんたも、普段から親しい人への感謝は忘れずにってことよ!」
「うん、それはもちろん…」
お母さんはアルバムを閉じ、本棚にしまった。
「晩御飯食べるでしょ?用意するからテーブルの上片付けておいてくれる?」
キッチンへと姿を消した。
重い空気を変えようと、咄嗟にテレビをつける。
こんな時に限って暗いニュース番組だ。
チャンネルを変え、なるべく楽しい番組を選んだ。
あ、お笑いやっている。
こりゃラッキーだ。
私はテレビを見入った。
いや、見入る努力をした。
だけど、どんなにテレビのボリュームを上げても、あまり耳に入ることはなかった…