10年愛してくれた君へ
「…藍?怖い顔してるけど、どうかした?」
充希に言われ、ハッと我を取り戻した。
何をこんなに気にしているのだろう。
春兄には『関係ない』と言われ、これ以上私が首を突っ込む場面でもないし、ここではただの教育実習生と生徒だ。
1週間だけだし、深く関わることもないはず。
「あの実習生が綺麗だからって、河西盗られるわけじゃあるまいし」
「いや、その心配は全然」
私たちの会話が聞こえていたのか…
「俺は浮気なんてしねーぞ?」
悪戯っぽい笑みを浮かべながら、河西くんはそう言った。
休み時間になり、南さんを取り囲む男子たち。
どうやら質問攻めにあっているようだ。
その様子を横目に、先程南さんが配っていた"自己紹介カード"を記入する。
『みんなのこと、たくさん知りたいから』と、そのようなものを準備していたらしい。
生年月日、名前、趣味など、今後南さんと関わっていくのに当たり障りのない内容ばかりで少し安心した。
向こうは私のこと知っているわけではないし、こちらが普通に接していれば、特に問題になることもないだろう。