10年愛してくれた君へ

家に着くと、緊張感から解放されたからか、一気に眠気が襲って来た。


風呂に入り、ベッドに潜るとすぐに意識が遠のいていった。




翌日、目が覚めて携帯を開くと藍からのメッセージが届いていた。


内容は、まだ起きているかというもので、朝を迎えてそのメッセージに気づいたことに藍に申し訳ない気持ちを持ちつつも、些細な内容でも俺にそんなメッセージを送ってくれたことが嬉しかった。


どうせ今日会えるしその時に謝ろう、そう思った。



しかし、藍と顔を合わせて先に謝って来たのは彼女の方だった。


「ごめんね、土曜なのに」


何で謝るんだ?むしろ嬉しいのに。


たくさん甘えて来てはくれるが、たまに遠慮がちになることもある。


そんなところも育ちの良さが出ていて好きだ。



「今日は予定はなかったから、全然大丈夫だよ。それより昨日のメッセージ返せなくて、それこそごめん。何かあったのか?」



「ううん!眠れなかったから、相手してもらおうかな〜なんて…あはは、ごめんね」


「そっか。珍しいな、そういう理由で連絡してくるの」


本当にそれだけだったのか。


充希ちゃんでもなく、彼氏の河西くんでもなく、俺を相手に選んでくれたことが嬉しくなり、無意識に頬が緩んだ。


「昨日ってさ、春兄何してた?」


唐突に聞かれ、一瞬戸惑う俺。


昨日は南と会っていたくらいだけれど…


「昨日?昨日は友達と会ってたけど」


「…そっか」



"友達"…間違いではないはずだ。


今の俺たちの関係は"友達"とも言いたくないが、立場上はそういうものなのだろう。


何も言わない藍に『どうかしたか?』と問いかける。


顔に不安な表情を浮かべるも、それでも返事がない。


明らかに様子がおかしい。


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