10年愛してくれた君へ
「藍、最近様子おかしくないか?大丈夫?」
そう問うと、ようやく反応を見せた。
「ううん、そんなことないよ、大丈夫」
俺に向けられる笑顔が、俺が大好きないつもの自然な笑顔ではなく、引きつったものだったため、藍は何かを抱え込んでいると思った。
「本当に大丈夫なのか?悩みあるなら俺聞くよ」
すると、藍の顔はみるみると曇っていき、静かに、そして強く呟いた。
「…私には、何も言ってくれないのに」
「え?」
藍の頭を撫でようとしていた手を引っ込める。
「春兄のことは教えてくれないのに、探ろうとしないで!!」
部屋中に響き渡る藍の怒鳴り声。
頭が真っ白になり、すぐに言葉が出てこなかった。
「ごめん、今日は帰ってもらってもいいかな。ちょっと体調悪いみたいで…」
違う…藍は嘘を付いている。
「…わかった」
しかし、そう答えることしかできなかった。
静かに藍の部屋を出て行く。
俺は、藍に干渉しすぎているのか?さすがに嫌気をさされてしまったのかもしれない。
帰り道、"体調が悪い"という藍を信じたフリをしてメッセージを送った。
何度も何度も携帯が鳴るのを待っていたが、藍から返信が来ることはなかった…