10年愛してくれた君へ
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「藍!何で電話途中で切っちゃうのさ!心配したんだよ!?藍んちまで押しかけてやろうかと思った」
翌日、私は朝からきちんと学校へ行った。
教室に入るなり、先に来ていた充希が真っ先に私の元へとやって来た。
その後に続く河西くん。
「俺の電話無視しやがって」
「ご、ごめん…寝込んでてさ」
笑顔を作り、両手を合わせて軽く頭を下げる。
「ま、元気ならいいけど…あんたが体調崩すなんて珍しいわよね」
「バカは風邪ひかないって言いたいわけ?」
「あ、バレた?」
いつものような和やかな雰囲気の中、今日も1日が始まる。
正直学校に来るのは辛かったけれど、部屋に一人でいるよりもこうして誰かと話していた方が気が紛れる。
いつまでも落ち込んでいても仕方がないよね。
しっかり前を向いて、春兄が目覚めた時に笑顔を見せられるようにしないと。
気持ちが落ち着いたのか、自分でも驚くくらい授業が身に入った。
春兄はきっと大丈夫。
そう信じているから。
充希と河西くんに、春兄のことを言おうか迷ったが、結局タイミングを逃してしまった。
そして帰りのホームルーム終了後、充希と二人で並んで帰った。
「駅前のカフェ寄ってく〜?藍の復活祝いで」
「え、いいよいいよそんな大したことなかったんだし」
他愛ない会話をしながら歩いていると、充希の口から驚くような言葉が出てきた。
「あ、そういやね、昨日黒山が結婚報告してたよ」
「え!!マジ!?」
何よそれ、どうして黙っていたのさ!
黒山は独身貴族だと校内で噂になっていたけれど…そうか、ついに結婚したのか。
「藍やっとちゃんと笑ったね」
「え?私そんなに暗かった?」
「いつもと比べるとね。まぁ病み上がりだし仕方ないけど。てか、あんな暑苦しい黒山に惚れた女とか興味深いんだけど」
黒山の話題で持ちきりになり、別れ際までお腹が痛くなるくらい笑った。