10年愛してくれた君へ
「まじか!偶然だな!でもよく今まで会わなかったよな」


「本当それだね!でもまぁこんなに広いショッピングモールだし、今日は奇跡だったのかもね」


「確かにそうかもな。じゃあ鵜崎も買い物か?一人?」


私がさっきそうしたように、河西くんも私の周りをキョロキョロ見渡す。


やってることが同じで、そこにも運命を感じる…なーんて思っちゃうのはさすがに気持ち悪い?



「うん、私は春兄に誕生日プレゼントを買いに。始業式の日が誕生日だったの!」


「へぇそうなのか。誕生日早いんだな。何探してるんだ?」


「ペンケース欲しいって言ってたからペンケース探してる!春兄、高校の時からずっと同じの使ってたんだって」


「俺今日ずっと暇だから、良かったら付き合わせてよ」


つ、つき…!!??


って、いやいや、そういう意味じゃなくて、そっちの付き合うじゃないし!!!



何過敏に反応してるんだ私!!!




「ぜ、是非!!私も今日ずっと暇だから!!」



こうして、河西くんとの誕生日プレゼント探しが始まった。





「春兄さんってどんなのが好きなの?」


「んー、ごちゃごちゃしたものはあまり持ってないかも。シンプルなやつがいいかなぁ。あと、来年から社会人だから、会社員っぽい感じの」


「俺の会社員のペンケースのイメージって、茶色い革製のちっさいやつなんだけど。俺の親父がそうだから」


「あ、わかる!なんかみんなそんな感じなのかな!」


「でも鵜崎の話を聞いている限り、俺の親父と一緒にしたら申し訳ないくらいの、出来る男ってイメージだからな〜」


「あははっ、それじゃあ河西くんのお父さんに失礼だって〜」



和やかな雰囲気が広がる。


いい感じじゃない?私たち!







「これとか、いいかも」


パッと目に入り、自然と惹かれたそれを手に取る。


「あぁ、いいじゃん。シンプルでオシャレだし」



結局革製なんだけど、色はネイビーで、お店のロゴなのか、よくわからないけど、小さく英語の刺繍が入っている。


コンパクトサイズでエリートサラリーマンが持ちそうなタイプだ。



「他のお店にもいいのあるかな〜?」


まだここ3軒目なんだよね。


雑貨屋さん他にも結構あるし。



「在庫まだあったら他の店回っても売り切れないっしょ。貸してみ、俺聞いて来るから」


「あっ」



私の手からさっと取り、レジの方へと姿を消した。


…スマート。



ペンケースが抜き取られたままの自分の掌を見つめ、ぎゅっと握った。



やっぱり、好きだなぁ…






すぐに河西くんは戻って来て、『まだ全然あるってさ』と言ってペンケースを元の場所は戻した。


「ありがとう河西くん」


「ん?いや…」


照れ臭そうに頭を掻くその姿に胸が高鳴った。


「ほら、次の店行こうぜ」


「うん!」
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