10年愛してくれた君へ
他のお店も見てみたが、結局さっきのペンケースが一番いいだろうという結論に至り、また戻って来た。


「いいの買えたな」


「うん!付き合ってくれてありがとうね!」



綺麗にラッピングしてもらい、大切に抱える。


春兄、喜んでくれるかな。あ、バースデーカードとかつけたいな!

そう思っていると、ちょうどいいタイミングでバースデーカードが並んでいるお店が目に入った。


「ねぇ河西くん!あのお店見てもいい?」


「おう!」



色んな種類があるな。プレゼントが入った紙袋が小さめだから、それに入るサイズ…


あ、この辺りとかちょうどいいかも。


大きめの、飛び出す絵本のようなデザインから、トランプほどの小さなものまでたくさんある中から、素材が和紙というシンプルかつオシャレなカードを気に入った。


封筒も付いているし、よし、これにしよう。




レジで会計を済ませ、お菓子コーナーをウロウロしている河西くんに声を掛けた。


「河西くんお待たせー!」


「いいのあったか?」


「うん!結構気に入ったの買えたよ!河西くんお菓子食べたいの?」


「いや、実は何も食べて来ていなくてさ、美味そうだなーと思って見てただけ」


「何も食べてないの!?そりゃお腹空くよね…」


時計を見てみると、もう12時を回っていた。


「丁度お昼時だし、ご飯でも食べる?」


「おう!食う食う!」


ニカッと笑うものだから、自然とドキッとするもので…


「じ、じゃあ行こうか!」


恥ずかしさを隠すように顔を背け、先に歩き出す。



今まで周りを気にしていなかったけど、家族はもちろんカップルも多い。


私たちも…周りからはそういう風に見えてるのかな?そう考えると、ますます恥ずかしくなって来た。




飲食店に入り、案内された席に着いた私たち。


「休日の昼時にしてはあまり待たされなかったな」


「そうだね、ラッキーかも」



メニューを広げ、何を食べようか悩んでいると、ふと隣の席に目がいった。



「あれ…?」


今朝、春兄と揉めていた人?


目を引く容姿だから、見間違えるはずがないのだけど、彼女の向かいに座っている男性…春兄じゃない。


金髪ピアスでいかにもチャラチャラしていそうな人だった。


あの後春兄と別れて、また別の人と会ってるんだ。
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