10年愛してくれた君へ
6.内定祝い
***
「春人くんの内定祝いするわよ!」
お母さんが突然言い出したのは、合宿から帰ってきた直後だった。
私の『ただいま~』に対する返事がこれだ。
「内定祝い?」
荷物が入った大きなカバンをソファに下ろす。
「あら聞いてない?春人くん内定貰ったって」
「それは聞いたけど...」
「だから内定祝いするの!パーティーよ!」
でもまだその会社に決めたわけじゃないんだよね?内定は何個か貰うものだってテレビでやっていた。人によっては内定貰ってすぐに就活をやめる人もいるらしいけれど。
「でも春兄の就活ってまだ終わってないんじゃ...」
「春人くんも『まだ1社だけですよ』って遠慮するんだもの。おめでたいことなのに。記念すべきひとつ目の内定なのよ!?」
「じゃあちゃんと決まってからでもいいんじゃない?春兄も忙しいんだし」
「パーティよ!」
って、聞いちゃいないし。
そういうわけで、我が家で春兄の内定祝いをすることになり、一人で盛り上がっているお母さんを無視してすぐに春兄に電話をしてみた。