10年愛してくれた君へ
「あ、春兄?ごめんね、なんかお母さんが一人で騒いじゃってるみたいで...やっぱり断っておこうか?内定祝い」
『喜んでくれてるし、せっかくだからいいかな?って思ってるんだ』
「そっか!春兄がそう言うなら私も楽しみにしてるね!」
『あははっ。ありがとうな、藍』
多分お母さんが押しに押しまくったのだろうけれど。昔から春兄は押しに弱いからなぁ。人の気持ちを踏みにじることをしないというか、そういうのを大切に受け止める人だ。
内定祝いの日にちをお母さんと春兄、春兄のご家族と連絡を取り合いながら決めた。
「藍、あんたも料理手伝いなさいよ?」
「パーティの料理?お寿司とかピザとかオードブルじゃないの?」
パーティって大体そういうものだと思っていた。もちろん、料理が大得意な家庭は手料理を振る舞うところも多いだろうけれど、我が家は至って"普通"だ。
主婦の味方である素シリーズを使うことが大半で、特に凝った料理をするわけではない。と言うか、私なんて料理初心者だ。人をおもてなしできるほどの腕前では全くない。
「何言ってるのよ!春人くんの内定祝いよ?腕を振るうのよ!」
腕まくりをして、気合十分!と言いたげなお母さんを横目に不安げになりながらも、私は荷物の整理を始めた。