10年愛してくれた君へ
「そろそろお料理出しましょうか」


お母さんさんはキッチンへ小走りで向かう。


春兄のご家族もお料理を持ち寄ってくれたみたいで、春兄ママはテーブルに持参したタッパーをいくつも並べた。


「わー!たくさん持って来てくれたんだね!」


テーブルに広がる豪勢な料理に目を輝かせながら、一品一品その美味しそうな見た目を堪能する。食は五感で楽しむって言うもんね。


「だって、うちの春人を祝ってくれるのに、その母親が何も用意しないわけにはいかないでしょう?」


春兄ママの手料理久々だな。昔は遊びに行った時、よくご飯もご馳走になった。まだ幼い私と春兄、春兄ママでテーブルを囲んだ当時の記憶が蘇る。


お母さんが戻って来て、私たちが作った料理を並べる。その中のたらこパスタを指差した。



「これ!このたらこパスタ私が作ったの!」


「藍が?内定祝いに藍の手料理食べられるなんて幸せだな」


恥ずかしげもなく春兄はサラッとそんなこと言うものだから、少し照れる。


「あら、二人が結婚したら毎日食べられるのよ?」


「お、お母さん!」


け、結婚って私は…!!


「そうね、藍ちゃんが春人のお嫁さんになってくれたら、私たちも安心だわ」


「あ、あのっ…」


「藍は彼氏いるから、それは無理かな〜」


申し訳なさそうに言う春兄の言葉に、しーんと静まり返る。


最初に声を発したのはお母さんだった。


「藍、いつの間に彼氏なんて」


「えっと、き、昨日?」


「昨日!?合宿中に彼氏できたの!?聞いてないわ!!」


別に言う必要ないと思って。こういうのっていちいち報告するものなの?


「あーあ、藍は春人くんに貰ってもらおうと思ってたのに…」
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