10年愛してくれた君へ
一人で家までの道のりを歩いていると、前からよく知る人物がだんだんと近づいてきた。


「あれ?藍じゃん」


先に声を掛けてきたのは向こうだった。


「春兄!」


「今日から学校だってな。新しいクラスはどうだ?」


私が春兄と呼ぶ彼は、竹内春人(タケウチハルト)、私の幼馴染だ。歳は私の4つ上で、大学生。


幼馴染でよくある”家がお隣さん”というわけではないのだけど、結構近いところに住んでいる。


一人っ子だった私にとって、ずっとお兄ちゃんのような存在だ。


元々色素の薄い髪は日差しに当たれば茶色くなり、大きくて少し垂れた目が私は好きだ。


そんな穏やかな雰囲気とは裏腹に、小さいころから野球をやっていた春兄の身体はとてもがっしりしていて背も高い。いわゆる"ギャップ"というやつだ。


春兄がモテモテなのは昔から知っている。


男女問わず春兄の周りには常に人がいる。私とは正反対のタイプだ。



「あのね聞いて!また充希と同じクラスなの!」


「へーそうなのか!奇跡も続くもんだな」


春兄と充希はお互い顔見知り。中学の頃から充希とはお互いの家を行き来しており、充希が家に遊びに来たとき春兄も居たことが多かったから、自然とそうなっていた。
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