10年愛してくれた君へ
「こんなに可愛いものね〜藍ちゃん。彼氏の一人や二人なんているわよね」


「いーやいやいや!!初彼だから私!」


何だろう、この場物凄く恥ずかしい!!


家族とかと恋愛の話するの恥ずかしい!!



「藍ちゃん初めてなのか?それは驚きだな」


「春兄パパまで…」



ふと春兄と目が合った。


少し驚きながらも、春兄はいつものように柔らかく笑う。


「おめでとう、藍」


「おめでとうは春兄だよ、内定。春兄を祝う場なんだからね」


そうだよ、何で私の話になっているの。


メインは春兄なんだから。


「藍ちゃん、フリーになったら春人をもらってやってね?」


春兄ママは春兄の背中をバシバシ叩く。


「母さんイテーよ」


「私に春兄は勿体無いって!!」


「あーら、そんなことないわ?逆に春人に藍ちゃんは勿体無いくらいよ」


「春兄も何か言ってよ〜!」


言われるがままの春兄はただ楽しそうに笑っていた。





「じゃあ、春兄の内定を祝して、カンパーイ!!」



テーブルに並んだたくさんの料理。


それを囲む、私の大好きな人たち。



幸せだなーとつくづく思う。


親同士の会話が弾んでいる頃、私は一人席を外し、トイレに入った。


出て洗面所で手を洗っていると、鏡越しに顔を覗かせる春兄と目が合う。


「春兄どうしたの?」


鏡の中の春兄に目を合わせたままそう問う。


「いや?何となく。藍と二人で話したいなーって思って」


水道の水を止め、タオルで手を拭き振り返る。


「何か変な感じ」


笑いながらそう言うと、春兄も笑みを返してくれる。
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