10年愛してくれた君へ
7.デーゲーム
「今年も春人さんと野球行くんだね」
春兄との野球観戦を明日に控えた金曜日。
恒例化を知っている充希にその事を伝えた。
「うん、河西くんがいいよって言ってくれたんだ」
「へぇー、寛大な彼氏ね」
「だろ?もっと褒めていいぞー」
充希はさっきまで使っていた理科の教科書で、河西くんの頭を勢いよく叩く。
「いって!!お前教科書の使い方間違ってんぞ!!」
「うっさいわね。なら私が新しい使い方開拓してやんよ。ってかさ、二人はまだデートとかしてないの?」
私と河西くんを交互に見ながら言う。私たちは顔を見合わせ、口を合わせて『まだ』と答えた。
一緒に帰ったりはしてるけれど、デートはないなぁ。
「なら今日帰りデートして来い。藍は明日春人さんとデートなんだから。彼氏が先越さんでどーする」
いや、春兄とは別にデートじゃなくて…家族行事のようなものだ。お互いそのような気はないのだから、デートとは言わないはず。
「おっ、デートするか?鵜崎」
「デート…したい!!」
こうして、河西くんとの初デートが決まった。言われてやるデートをデートと言うのか際どいラインだけれど。