10年愛してくれた君へ
試合が終わり、人がゾロゾロと球場から出ていく。
「結局逆転負けしたまま終わっちゃったね~。最後サヨナラのチャンスだったのに」
「あのおじさんは喜んでいるだろうな」
あぁ、私がぶつかっちゃった相手チームのファンのおじさんか。
「あははっ、そうかもね」
駐車場に停めている春兄の車に乗り込んだ。
「また行こうね!」
「行ってくれるんだ?」
意地悪っぽく笑いながら春兄は言う。
「もちろんだよ!家族行事みたいなものだし!」
すると、なぜか春兄は少し表情を歪めた。
「...うん、そうだな」
春兄の大きな手が私の頭を包み込む。
「私の頭撫でるの、春兄の癖だよね」
「癖でもないぞ?撫でたいと思ったから撫でただけ」
「じゃあ撫で癖ってやつだ」
「あははっ何だそれ」
和やかな空気が車内に広がる。
...ずっと続けばいいな、こんな関係。
そう思いながら、車は動き出した。