10年愛してくれた君へ
8.年下の女の子
「あの、河西先輩いますか?」
休み時間、トイレに行こうと教室を出ようとした私は声を掛けられた。
顔を向けると、それは見覚えのある女の子。
「あっ急にすみません!私、2年の高橋っていいます」
「あ...」
そうだ、この前河西くんと話していた、女子サッカー部の女の子だ。
「河西くんならさっき教室出ていったけど...次使う教科書忘れたみたいで、他クラスに借りに行ってるみたいだよ?」
「そうなんですね、じゃあ待ってみます。ありがとうございます」
ニコッと微笑みながら軽く頭を下げる高橋さんに好印象を抱いた私。
そういえば、充希前に言ってたっけ。
『絶対河西のこと好きだよ』みたいな。
すっかり忘れていた。
河西くんとは順調だし、何かトラブルがあるわけでもないので、可愛い女の子が河西くんを探していようと何とも思わない。
そもそも部活で関わりがあるわけだしね。
トイレから戻ってきた私の目に入ったのは、河西くんと高橋さんが楽しそうに話している光景。
特に何も思わないまま教室に入ろうとした。
「あ、鵜崎」
河西くんに呼び止められる。
その声に、高橋さんの視線も向けられた。
「何?」
「ちょうどよかったから紹介させて。高橋、俺の彼女の鵜崎藍」
えっ!!このタイミングで!?
「あっえっうん!!そうなの!!」
「彼女さん...そうなんですね」
「学年も違うし、多分あまり関わることも少ないと思うけど、よろしくしてやってよ」
河西くんは私にそう言いながら、高橋さんの頭をポンポン叩いた。
胸がちくっとした。
この感覚は何なのだろう。
頭ポンポンなんて、私も春兄によくされていることだし。
その行為にそこまで意味はないと思う。
...うん、考え過ぎだ。