10年愛してくれた君へ
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「行ってきまーす」
今日は日曜日。
河西くんと遊園地へ行く日だ。
家を出て駅に向かって歩いていると、春兄の姿が目に入った。
「春兄!」
振り返る春兄は、私を見つけた時目を少し見開き、そしてすぐに細め微笑んだ。
「藍。どっか行くのか?」
「うん、河西くんと遊園地。春兄は?」
「俺は久々にサークルに顔出そうと思って。練習場に行くんだ」
言われてみれば、今日はやけに荷物が多い。
練習着とか色々入っているのだろう。
「そっか!頑張ってね!」
「あぁ。藍も楽しんで来いよ」
「うん!じゃあね!」
春兄と別れ、再び足を進める。
春兄が立ち止まり、一度こちらを振り向いたことには気づかずに...
現地集合で、私が到着したころには既に河西くんがいた。
「ごめん待った?」
河西くんの姿を見つけるなり駆け寄る。
申し訳ないと思い謝るが、河西くんは声を出して笑った。
「あっはっは!そんなダッシュしてこなくていいのにさ!しかもジャストだし」
時計に目をやると、集合時間丁度だった。
「鵜崎はあれだな、お礼癖と謝り癖があるな」
「え?そんなことないと思うけど」
何だか既視感...
あぁ、同じようなやりとりを春兄ともしたんだ。
園内に入場し、近くのアトラクションから並ぶ。
この遊園地の目玉である、高所から垂直に落下する大型ジェットコースターだ。
日曜日ということもあり、列には既に大勢の人が並んでいた。
「ここ、結構敷地も広いしアトラクションの数も多いから、全部乗るのは難しいかもしれないな」
人の多さに圧倒されている河西くんは、グルリと辺りを見回してそう言う。
「そしたら乗れなかったのはまた今度来ようよ!」
「おう!」
そして、ちゃっかり次のデートの約束もしてしまった。