10年愛してくれた君へ
「私は...メロンソーダで」
「メロンソーダか、了解」
私と高橋さんが残り、河西くんが飲み物を買ってきてくれることになった。
二人きりになり、しばらく沈黙が続く。
「...私、サッカー部に入ったころから河西先輩が好きだったんです」
沈黙を破ったのは高橋さんだった。
「え?」
顔だけを彼女の方へ向ける。
私の方は見ようとせず、じっと前だけを見つめていた。
「先輩が部活を引退するときに、告白しようと思っていたんです。だから、彼女ができたっていう噂を聞いて、ショックを受けました」
「...」
何も答えることができなかった。
何故か自分が悪いことをしてしまったかのような、そんな感覚になる。
「先輩を...盗らないでください」
「っ!?」
ゆっくりと私に向けられた彼女の目には、大粒の涙。
「...ごめん」
どうして謝っているのだろう。
河西くんの言っていた”謝り癖”ってこういうことかな。