10年愛してくれた君へ
「何で謝っているんですか!?謝るくらいなら先輩を返してください!!」
声を張り上げる高橋さん。
そして、溢れていた涙が頬を伝った。
「...あ、あの、私」
思わず目を逸らした。
私が河西くんを奪った?
「...部活で、河西先輩が鵜崎先輩と遊園地に行くって聞きました。それで私、一人で来たんです。本当に好きだったから。だから、デートなんてしてほしくなくて...」
初めてこの子を”恐い”と思ってしまった。
じゃあ、友達とはぐれたっていうのは嘘?
私たちと行動を共にするために、嘘をついたっていうの?
「あ、携帯を無くしたのは本当ですよ?でも結果的に無くしてラッキーでした。持ってたら連絡取らずにフラフラしているなんて、怪しいですもん」
何なのこの子。
一体何がしたいの??
「別れて下さいって言ったら、困ります?」
「...嫌だよ」
「...ですよね」
それから、河西くんが戻ってくるまでお互い口を開くことはなかった。