10年愛してくれた君へ
「お待たせー。はい高橋オレンジジュース。鵜崎も、ほら」
「ありがとう」
「ゴチです先輩!」
涙が引いたのか、先程の高橋さんが嘘みたいだ。
私と高橋さんは距離を取って座っていたので、真ん中がだいぶ空いていた。
河西くんは、その空いたところに座った。
夕日が沈みかけている頃、園を出る人たちが目の前を通って行く。
家族やカップル、友達同士で来ている人たちも多いだろう。
果たして私たちは、周りの目にはどう映っているのだろう。
「あーあ、諦めるしかないのかなー?」
そう言ったのは高橋さん。
その意味が分かるのは、私だけ。
「何が??」
「先輩は知らなくていいですよーだ」
いつの間にか彼女に笑顔が戻っており、その変わりように困惑するのは当然のことで。
「私やっぱ帰りますね!」
「え、高橋さん?」
突然立ち上がって何歩か進み、ゆっくりと足を揃え、体ごと振り向いた。
「何か自分がやってること、バカバカしく思えてきて。今日は諦めます」
「き、今日は?」
「はい。それじゃあ!」
突然現れ、突然去っていく。まるで嵐のような子。
結局私にとって彼女の存在はどういうものなのか、位置付けがわからないまま終わった。
「何だ?あいつ」
何も分からない河西くんは口をぽかんと開けている。
「河西くんは、モテモテだ」
「...は?」
あれは宣戦布告なのだろか。
でも、あの涙は...
きっと本物だった。