苦手なあの人
そんなことを考えてたとき。

「わかんないの、どこ?」

ふわりと香る、香水の匂い。

いつの間にか私の右隣に、左手を腰にあてた寺崎さんが立っている。
寺崎さんはそのまま、マウスの上の、私の手の上に自分の手を載せた。

「もしかして、ここ?これは……」

私の手に自分の手を重ねたまま、寺崎さんはマウスを操作してる。

感じる体温、香る香水の匂い、すぐ近くの吐息。

至近距離なんて耐えられなくて、あたまの中身がぐるぐる回る。

「で、これでよし、っと」

「……あ、はい。
ありがとう、ござい、ました」

熱い顔で俯いたまま、顔も上げずに礼を云う。
けれど、寺崎さんは手を離してくれない。
それどころか私の指を、その長い指でつぅーっと撫でてくる。

「加賀さんはさ。
俺とあんまり、目、合わせてくれないよね」
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