苦手なあの人
「見てって。俺の目」

怖い、見たくない。

そんな気持ちとは裏腹に、私の視線は少しずつ、怖いもの見たさで寺崎さんのレンズの奥に向いていく。

どくん、どくん。

大きく響く、自分の心臓の音。

どっくん。

目があった瞬間、心臓が止まったかと思った。

深い深い、闇のようなその瞳。
魅入られた視線は一ミリだって逸らせない。

どくっどくっどくっどくっ。

再び動き始めた心臓の鼓動は信じられないほど早く、息が苦しい。

「朋美……」

少し掠れた、寺崎さんの声。
そのまま顔が近づいてきて、唇がふれた。
離れると、目を開けた寺崎さんが困ったように笑った。

「……目、閉じて。朋美」
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